塩の効果

塩の効果

水産物を利用した保存食としては、干物の他に塩鮭、塩サバ、たらこ、数の子、塩辛等の 塩蔵品と呼ばれる、塩の効果を利用した食品があります。塩蔵品は干物の様に乾燥工程を含みませんが 塩の脱水効果、浸透した食塩による水分活性の低下作用によって保存性を高めた食品です。
干物の製造においても、塩蔵品と比べて、塩の使用量は少ないものの、塩蔵の後に乾燥を行っており 干物(塩干し品)は塩による保存性の向上と乾燥による、保存性の向上の二つをあわせた製品であると言えます。
また、塩にはたんぱく質を凝固させる効果もあり、その凝固作用により食べたときの食感を向上させることも出来ます。

たんぱく質凝固作用

魚肉は加熱すると、熱凝固して脆く、弾力がなくなってしまいますが、あらかじめ食塩を加えておくと弾力を持ち しなやかになります。この特性を最もあらわしたのがカマボコに代表される練り製品で、塩を加えた魚肉をすり潰し その後加熱することで、あのような弾力を生み出しています。
これは、塩が魚に含まれるミオシンというたんぱく質に作用して筋繊維の結びつきを強め、強い弾力を生み出すためです。 強く結合した筋繊維は、水分の保持力も高くなり、加熱したときにドリップ(汁)を出しにくく、食感も良くなります。 干物というと、水分が少ないというイメージがありますが、この塩の効果により、加熱したときの水分の保持力が高く 塩を加えずに加熱した魚よりも、干物のほうが加熱後の水分は多く残ります。これが、干物独特のジューシーな食感を 生み出しているのです。

防腐効果

食品に塩を加えると、腐敗しにくくなりますが、食塩自体に防腐効果や殺菌作用があるわけではありません。
塩分の濃度が高くなると浸透圧が高くなり、食品から水分が除去されると共に、高濃度の食塩を含む培地では 微生物は原形質分離を起こして発育できなくなるためです。
また、食塩の添加による水分活性(Aw)の低下も微生物の活動を抑える効果があります。
しかし、十分な保存性を確保するためには、かなり濃い塩分濃度を必要としますが、近年の健康志向により 食塩の使用量は低下傾向にあります。この理由は消費者の嗜好の変化が第一の理由として挙げられますが、 輸送、保存技術の向上により大量の食塩の使用を必要としなくなったことも大きな理由として挙げられます。

水分活性の低下

上でも述べたとおり、食品は水分活性を下げることで、保存性を高める事が出来ます。 食品に食塩を添加すると、食品に含まれる水分の内の自由水の一部が塩と結合して 結合水となります。微生物はその活動に水分を必要としますが、その活動に利用できるのは自由水だけです。
加える塩分が多いほど、水分は食塩と結合して結合水となるため、微生物は活動しにくくなり保存性を高める事が出来ます。

味覚への影響

食品に塩を加えれば当然のごとく塩味がします。塩の味覚への影響はこれだけではなく、 例えばスイカに少量の塩を加えると、甘みが増すことは良く知られています。 食品中に食塩が共存すると、アミノ酸等のうま味物質や糖等を強く感じるようになります。つまり味覚強度が増強されるということです。 逆に、適度な塩分を加えなければ、味覚強度は低くなります。減塩料理が美味しくないと不評なのはこのためです。