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魚の旨味

うま味とは

「美味しさ」を感じるとき、最も重要な要素として「味」があります。味には、甘、塩、酸、苦の4基本味が あり、基本味はどれもお互いに交換することは出来ません。つまり基本味の一つである「甘み」をあらわすには、 甘みをもって行うほかに無く。塩辛さ、酸っぱさ、苦味をどのように組み合わせても 甘みを感じることは出来ないと言うことです。

日本料理に欠かせない味覚表現として「うま味」があります。うま味を感じる成分とは、 グルタミン酸等のアミノ酸やイノシン酸等がありますが、このグルタミン酸等から感じる「うま味」も先に述べた 4基本味とは独立したものであり、他の甘、塩、酸、苦をどのように組み合わせても、うま味を合成することが出来ないことが わかってきました。このような経緯から近年では、4基本味にうま味を加えて5基本味が提唱されるようになって来ました。 更に興味深い事に、グルタミン酸等のアミノ酸とイノシン酸、グアニル酸等のヌクレオチド系は組み合わせることで、それぞれのうま味成分を あわせた以上の効果。うま味の相乗効果があることがわかってきました。 処で、うま味と言えば日本料理の専売特許のように思われていますが、ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランの「味覚の生理学」(美味礼讃)に以下の記述があります。

科学の栄養学に対する最大の貢献はオスマゾームを発見したこと、いなむしろそれを明確にしたことである。 オスマゾームというのは冷水中に解ける獣肉の中の高度に味のある部分のことで、それがエキス分と違うのは、このエキス分のほうは 熱湯の中でなければ溶けないという点である。・・省略・・オスマゾームはさんざんわれわれの祖先に賞味された後に発見されたので、その点すこぶるアルコールに似ている。 これも幾多の世代を酔わせた末に、やっと蒸留によってそれを抽出する方法が発見されたのだ。

ブリア・サヴァランが述べている「オスマゾーム」とはうま味成分であることがわかります。しかし、ブリア・サヴァラン以降 このオスマゾームという言葉は全く使われていません。 「うま味」を賞味することには貪欲なフランス人も、それが何であるかについてはあまり関心が無かったのでしょうか。

新鮮な魚ほど美味しいのか

言うまでも無く、魚は鮮度が大切で、素材の持ち味を大切にする日本料理では、古くなってしまった魚では美味しい料理を 作ることは出来ません。昔から魚は一番鮮度が良いときは、刺身で、次は焼いて食べ、最後は煮て食べる。といいますが、 焼き魚も煮魚も鮮度の良い魚を使ったほうが美味しいのはいうまでもありません。

さて、魚が死んだ直後の身は柔らかくアルカリ性で、うま味成分はあまり多くありません。 魚肉をはじめとして動物の筋肉には、生体内でエネルギーを作る基となるATP(アデノシン―3リン酸)があり、 このATPが魚の死後分解されてイノシン酸などのうま味成分になります。 料理店の中には水槽の中で魚を泳がせておいて、お客の目の前で調理する活魚料理を売りにしている店がありますが。 そういった魚は、死後あっという間に食べられてしまいますので、ATPを分解してイノシン酸などのうま味成分を生成する時間が 全くありません。ですから、極めて新鮮ではありますが、うま味について言えば決して美味しい物ではありません。

硬直中が美味しさのピーク

魚は死んでからしばらくすると死後硬直が起こります。これは牛や豚などの食肉でも同じです。 食肉の場合、硬直中は筋肉が硬く美味しくないため一定期間低温で貯蔵し自己消化によって熟成させます。 これをエイジングと言い、この間に肉が柔らかくなり、また肉の酵素の働きによりうま味成分が生成されます。 エイジングに要する期間は、牛肉で14日程度、豚肉で5日、鶏肉では12時間程度とされています。 魚の場合は、元々身が柔らかいのでエイジングは必要ありません。ただし、大型のマグロやブリ。ヒラメなどの場合は筋肉が硬いため 刺身で食べるには死直後や硬直中は硬すぎて美味しくありません。このような魚はしばらく低温で貯蔵し身が柔らかくなってから刺身にしたほうが 美味しく食べられます。料理店でも大型の魚を仕入れた場合は、冷蔵庫内で1日寝かせた後に刺身にして提供しています。

一般的に魚は死後硬直に入るとイノシン酸やグルタミン酸等のうま味成分が増加を始めます。しかし死後硬直を過ぎる軟化した 魚の組織に最近が侵入して腐敗しやすくなります。更に軟化が進むと、せっかく増加したイノシン酸等のうま味成分が分解されて 味が悪くなってしまいます。このように魚の場合は、死後硬直中に美味しさのピークを向かえその後急激に美味しさが低下していくことがわかります。 鮮度低下の速度は魚種によって異なります。サバやイワシなど青魚は「サバの生き腐れ」と言われ鮮度落ちが非常に早いことが知られています。 一方、鯛等の白身魚は鮮度が落ちにくいのです。漁獲した魚を氷詰めにすると、マダラでは2~8時間。ハマチは4時間。マダイは24時間で硬直が最大になるといわれています。 しかし、硬直に入るまでの時間や硬直の持続時間は、魚の大小や死に方、保存温度、生存中の栄養状態によっても変化します。 魚を採った漁船は勿論、市場や販売店等でも出来るだけ鮮度が落ちないように工夫しています。

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